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こんにちは。

ご訪問いただき、ありがとうございます。

 

先日届いた「税理士界」という新聞を見ていたら、

税理士職業賠償責任保険の事故例が各税目ごとに載っていて

その中の一つ、相続税の事例として、

小規模宅地の特例適用における適用地の選択ミスにより、

相続税が過大納付となった事案が載っていました。

特例適用により、評価減額が最大となることのみ着目し、

相続税額が最小となる適用を見逃した、というミスでした。

 

小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例について、詳細を事細かに説明するとかなり長くなりますので、

ここではざっくりとした説明にとどまらせていただきます。

(念のために、国税庁のリンクを貼らせていただきます。→ 国税庁リンク )

(当該記事は、同業者向けではなく、納税者向けに概要をわかりやすくお伝えする

目的で書いておりますので、ご了承ください。)

 

ざっくりではございますが、

小規模宅地等の特例とは、

相続の開始の直前(被相続人が亡くなる直前)に、

被相続人又は被相続人と生計を一にする親族の

事業の用に供されていた宅地又は居住の用に供されていた宅地等のうち、

一定の選択をしたものについて、

申告期限まで保有し続けている等の一定の要件を満たすものは、

相続税の計算において

その宅地の課税価格を一定の割合減額します、といった規定です。

 

例えば、

年老いたお父さんと同居していた息子がいたとします。

そして残念ながら、そのお父さんが病気かなにかで亡くなってしまい、

その息子がその同居していた家の敷地を相続し、

申告期限までその敷地を保有し、その上に建っている家に居住している場合、

この敷地については小規模宅地等の特例の適用を受けることが可能です。

 

仮に、この敷地の課税価格が、1,000万円だったとします。

もし小規模宅地等の特例の適用を受けなければ、

この1,000万円に対して相続税の税率を乗じて相続税を計算することになりますが、

この規定の適用を受ければ、敷地面積の330㎡までは、80%の減額を受けることが可能です。

もし、この1,000万円の敷地が330㎡以下だったとしたら、

80%減額で、課税価格を200万円までに減額することができます。

 

このような優遇を受けることが可能な宅地は、

・特定事業用宅地等
・特定居住用宅地等 ※今回のお父さんと息子の例
・特定同族会社事業用宅地等
・貸付事業用宅地等

と4種類ほどあります。

 

それぞれの、宅地で、適用できる限度面積や減額される割合が異なっており、

また、一つの相続の中で、これらの宅地が複数ある場合は、

一定の計算式を使って、限度面積を計算することになります。

 

小規模宅地の特例を適用できる宅地が複数ある場合は、注意です

上記でもお伝えしましたが、

一つの相続の中で、これらの宅地が複数ある場合は、

どの組み合わせにしたら、相続税額が1番安くなるのかを

税理士は検討しなければなりません。

今回新聞で読んだ事故例は、課税価格は1番安くなる組み合わせを選んでいたようでしたが、

相続税が1番安くなる組み合わせを選んでいなかったことでミスとなってしまいました。

 

相続人の中に配偶者がいたのが原因でした

課税価格は1番安くなったのに、

相続税額は1番安くならなかった、とはどういう場合でしょうか?

 

結論として、相続人の中に配偶者がいて、

配偶者もこの特例対象宅地を相続する場合は、このようなことがおこってきます。

 

なぜかといいますと、

配偶者は、この小規模宅地等の特例の優遇規定を受けなくても、

「配偶者の税額軽減」の規定の適用を受けることにより、

相続税が大幅に安くなるからです。

 

配偶者は、「配偶者の税額軽減」の規定を受けることにより、

・1億6千万円までの遺産額
・遺産額のうち、配偶者の法定相続分相当額

のいずれか大きい金額に相当する部分までは、相続税がかかりません。

 

なので、

相続税を計算するときに、

小規模宅地等の特例の適用を受けることが可能な宅地が複数ある場合で、

その中に配偶者が相続する宅地が含まれる場合は、

当該配偶者が相続する宅地については、

小規模宅地等の判定においては、外すケースが多いです。

今回の新聞に載っていたミスは、

課税価格が1番安くなることのみに着目して

配偶者の宅地を当該特例の適用に含めていたのが原因でした。

 

この選択一つで、税額が全然違ってきますので、注意が必要ですね。

あたりまえのことですが、

留意をしておきたい事例だと思いましたので、

今回記事にさせていただきました。